「あの頃と違って、もう泣いてはいないね?」
「ええ、幸せが逃げちゃうから・・・。
もう泣かないわ・・・。」
「そうか、君は強くなったな・・・。」
「じゃないと、あなたに嫌われちゃうもの・・・。
あはっ、なに言ってるんだろう・・・わたし。
なんだか私、あなたと一緒にいて舞い上がっちゃってるみたい・・・。」
「そうか・・・。
俺は逆に、君から嫌われてると思っていたから戸惑っているよ。」
「嫌いよ・・・。
大っ嫌い・・・。
だってアナタ、わたしを見てくれないんだもの。
悔しかった・・・。
わたし、あなたの事、ずっと見てたのよ?
気付かなかった?」
「正直言えば、なんとなく気付いてた。
でも、気付かないフリをしてた。」
「ねえ?
どうして居なくなったの?
私はあなたに・・・、傍にいてほしかった・・・。
なぜあなたは、私から離れていったの?
なぜ私の前から姿を消したの?
私は、あなたのために強くなったのに・・・。」
「君は、自立できる女性に生まれ変わったんだよ?
泣き虫だった頃の君とは、全く違うんだ・・・。
その時に俺は、君に必要でなくなったんだ・・・。」
「だから、居なくなったと言うの?
なのにアナタは突然、わたしの前に現れた・・・。
あの女を抱きかかえて・・・。
どうして、あの女なの?
どうして、わたしじゃダメなの?」
「あいつは・・・。」
「あの女の事は『あいつ』とか『コイツ』なのに・・・、
私の事は『君』と呼ぶのね・・・?
まるで・・・、線を引かれてるみたいだわ・・・。
あなたって、酷い人ね・・・。」
「ごめん、そんなつもりじゃなかった・・・。」
「・・・私の方こそ、ごめんなさい。
つい、取り乱してしまって・・・。
あなたを苦しめるつもりは無かったのよ・・・。
あれ・・・?
へんだなぁ・・・。
なんで?・・・だろう・・・。
おかしいわね?」
「とうとう俺も、カスの仲間入りだな・・・。
君を泣かせてしまった・・・。」
「そうよ・・・。
私にとって、誰にも自慢できる、最高のカスだわ!」
「だが俺は、君のその涙を拭いてやれない・・・。
すまない・・・。」
「馬鹿にしないでよ。
私は自立した女よ?
ハンカチくらい持ってるわ!」