放課後、下校時刻である。
K子は松葉づえを使いながら、カバンを持とうとする。
大変そうで、見ていられない。
思わず手を貸してしまう。
「それじゃ、荷物持つぞ?」
俺はK子のカバンを持ってやる。
「あっ!
・・・ありがとう。」
そしてU子が、K 子の前をサポートしながら歩いていく。
「ほらK子、階段だよ?
大丈夫?気を付けてね?」
階段の昇降も問題だな・・・。
「また、抱っこしようか?」
俺は半分その気で、K子に声をかけた。
「もうっ、ばかっ!」
K子は、保健室に担ぎ込まれた事を思い出したのか、
顔が真っ赤になった・・・。
「大丈夫だよ・・・これくらい・・・。」
まったく、この意地っ張りめ・・・。
でもその性格が、意外と可愛いく思ってしまう。
下駄箱でU子が靴を用意する。
「はい、靴。」
「U子ちゃん、ありがとう。」
「んじゃこのまま、家まで送ってくぞ?」
「だめっ!
それだけは絶対にダメッ!!
あなただけは絶対に・・・。」
いきなりK子は松葉づえを振り払い、
俺にしがみついて来た・・・。
「えっ?なんで?」
「ウチの親、厳しいのよ。
特に男女関係には・・・カンが鋭くて。
私も親の前で、あなたにウカツなこと出来ないのよ・・・。」
「なるほどな、俺は可愛い娘をたぶらかす『悪い虫』ってところか・・・。
こりゃ、害虫駆除されそうだ。」
「あなたってば、なに呑気なこと言ってるのよ。
私たちにとって重要なことよ?
お願いだから、私の言う事聞いて!」
K子は必至で懇願してくる。
これは聞いてやらねばなるまい・・・。
「えっ!?
俺は大丈夫なの?」
Yが抗議するかのように口を挟んでくる。
「あんたは、どうでもいいからね。」
K子は即答する。
「ひで~っ!」
Yはその場でいじけだした・・・。
EがYの肩を叩きながら慰めている。
「俺だと・・・、マズイわけだ・・・?」
改めて、K子に確認を取る。
「そう・・・。
あなただと、たぶん両親が警戒するわ・・・。
いいえ、絶対に・・・。」
「はぁ?
なんで俺が警戒される?」
非常に理解に苦しむ・・・。
「だって、あなたって優しくて、大人なんだもの・・・。
それに落ち着き過ぎてるのよ、同年代の男子より。
だから絶対、あなたを勘ぐってくるわ。
私の両親に反対されたら、後で私たちが困るのよ?」
「どうせオイラはガキですよ~。」
Eに慰められながら、Yは完全にいじけてフクレだした・・・。
「そういうところが、あんたはガキなのよ。」
K子は構わず追い打ちをかけた・・・。
なにもそこまで・・・。
やっぱりキツイ性格してるよ、お前は・・・。
「しかし困ったなぁ・・・。」
K子の足が完治するまで、負担を軽くする方法はいったい・・・。
「それじゃ、私がしばらくK子を送り迎えしようか?
私だったら、問題ないでしょ?」
U子が申し出てくれた。
「そんなのいいわよ。
だって、U子ちゃんが大変じゃない。」
「そんなことないよ?
ちょっと早く、家を出るだけだから。」
「ごめんね?ウチだけ逆方向で・・・。」
C子が申し訳なさそうにしている。
「C子ちゃん、大丈夫だから心配しないで?」
U子はC子を気遣った。
「じゃ、U子には迷惑かけるけど、K子のことをよろしく頼むよ。」
俺は、U子に頭を下げた。
「このU子さんに、任せなさい!」
おおっ、なんと頼もしい。
素晴らしい幼馴染でよかったと、感激してしまった。
U子は俺からK子のカバンを取ると、K子に声をかけた。
「それじゃK子、行こうか?」