教室に入るのが、なんとなく恐い。
血の雨が降りそうな、嫌な感覚に満ち溢れている。
廊下でU子が待っていてくれた。
「いまK子、ご機嫌ナナメだから。
気を付けて入った方がいいわよ?」
「当然だよな・・・。
分かった、ありがとう。」
目の前であんな場面を見せられたら、
謝っても、そう簡単に許してくれないだろう。
それならば下手に刺激せず、普段通りに席へ着くしかないな・・・。
「おっす。」
「あら?
隣のかたは、ド・ナ・タ・だったかしら?」
「お~い、K子さ~ん。」
「あらやだ、私の知らない人だわ。」
「あのね?
それは、無いんじゃない?」
「気軽に・ワ・タ・ク・シ・に、話しかけないで・く・だ・さ・る・?」
「おいおい・・・。
なんか、言葉が刺々しいぞ?」
「わたくし、知らない人には返事をするなって、親から教わってますの。」
「俺に一体、どうしろって言うの?」
「知らないわよっ!!
さっさと、あの女のところへでも行っちゃえばっ!?」
「そりゃ無いだろ~。」
「もう、うるさい!」
「K子さん?」
「・・・・・・。」
「K子ちゃん?」
「・・・・・・。」
「やっほ~。」
「・・・・・・。」
「お~い。」
「・・・・・・。」
「K子~。」
「・・・・・・。」
「もう、どうすりゃ良いんだよ・・・。」
「じゃ、告白してよ!」
「・・・・・・・・・嫌だ。」
「なんでよ!?」
「おまえ・・・俺の気持ちぐらい、判ってるだろ?」
「そんなの、言ってくれなきゃ判らないわよ!」
「わかった、そのうちに言う。」
「いま、言いなさいよ!」
「だから、待ってろって・・・。」
「言わなきゃ、私も認めないからね?」
「いま言ったら最後、この先ず~っと、お前の尻に敷かれるだろうが。」
「・・・・・・ぷっ。」
そして、いきなりK子は笑い始めた。
「もしかして、それを今まで気にしてたの?」
「悪いか?」
「馬鹿ね・・・。
でも、絶対に言わせて見せるからね?
その時は、私の勝ちよ?」
本音を言ってしまえば、
『愛してる』などと言ったら、
K子を縛ってしまいそうで怖いのだ。
いまから、K子の恋愛の自由を俺が束縛して良い訳がない。
まだ、互いに中学生なのだから・・・。