教頭先生が、話を始めた。
「君たちも知っている通り、この中学校は新設校です。
器(校舎)は出来ましたが、中身(設備)が無い状態です。
毎年、市から予算は出ますが、その予算は限られています。
したがって、順番に設備を整えなければならないのですが、
何から揃えればよいのかを君たちに検討してもらいたい。」
なるほど、もう一度『縁の下の力持ち』になれと・・・。
しかも決定権は、生徒に委ねる・・・と。
つまり表面上、生徒の自主性を引っ張り出したい訳だ・・・。
「しかし、それくらいの事であれば、
現行の生徒会にでも出来るのでは?」
M先輩が発言する。
そう、もう高校受験に専念したいだろう。
「残念だが、君たち程優秀ではないのだ。
おそらく、生徒会運営に手が一杯だろう。」
ああ、だからS美のお姉さんは、
俺たちが復帰しない事を残念がっていたのか・・・。
いまやっと、納得できた。
だが、そんなにややこしく組織を作ってはいなかった筈だが・・・?
現行生徒会は、いったい何をしているんだ。
更にM先輩は食い下がる。
「では、アンケート調査では?」
「アンケートでは、最優先すべき物事を見失う恐れがある。
だから優秀な君たちに、お願いしたいのだ。」
これはもう、諦めるしかない。
事実上の命令だ・・・。
M先輩は、困り顔で図書室を出て行った。
我々も、それに続いた。
出ようとする間際、S美のお姉さんに出くわした。
「やぁ、なかなか大変そうだね?」
S美のお姉さんは、図書委員だった。
「お姉さん?」
「ん~、いいねぇ。
もう一度、呼んでおくれよ。」
「お姉さん、妹さんに何を話したんですか?」
「別に?
『あれは、なかなかの男だぞ。』って言っただけだが?」
「それじゃ、火に油じゃないですか?」
「君が言うように、あの子の人生だ。
思うようにさせようと思ってね?
私も、いつまでもかばってやれないよ。」
「それじゃ、意味ないでしょ?
説得はどうしたんですか?説得は・・・。」
「妹がダメなら、私が嫁に行こうか?
あっ、それじゃ君に『お姉さん』って呼ばれなくなるな・・・。
そうか、私が君を『旦那様』と呼ばなくてはならないんだ・・・。
それも良いなぁ。」
「いい加減にしてくださいよ。
ああ、M先輩じゃないけど、頭抱えたくなってきた・・・。」
「ああ、Mね。
あいつも大変だぁ・・・。」