7月に入り、日差しがだんだん強くなってくる。
期末テストを目前に控えた、ある休み時間。
C子とU子、それにK子の3人が談笑していた。
すると、K子がいきなり口火を切った。
「このところ、暑くなってきたよねぇ。」
俺はギクッとした。
K子・・・おまえ、なに余計な事を話してるんだよ・・・。
どうも雲行きが怪しくなってきそうだ・・・。
俺は内心、焦り始めた。
「ほんとだよねぇ。」
C子がそれに賛同する。
「こう暑くなると、プールに入りたいよねぇ。」
U子が下敷きをうちわ代わりに仰ぎながら話す。
げっ!
やっぱりその話になったか・・・。
トボケられるなら、それに越したことは無い。
そうだ、聞かなかったし見なかったことにしよう!
「俺が聞いたところだと、プール作るの後回しらしいぜ?」
Yが口を挟んでくる。
この野郎、またも余計な話をしてくれる・・・。
知らんぷり、知らんぷり。
「うそっ!?なんで?」
Eが話しに加わってくる。
なに集まってんだよ、こいつら・・・。
そうだ、俺は話に入らなかった。
傍で聞いてるだけだ。
うん、そうだ!
このまま何気ない顔を押し通すことにしよう。
そうそう、知らないフリ、知らないフリ・・・。
が、しかし・・・。
「ねぇ、そうなの?」
突然K子が、俺に代表して聞いてくる。
「へっ!?」
おまえ、それは無いだろ~。
これじゃ、逃げられないじゃないか・・・。
一体全体、何と答弁すればいいんだ?
一度決定してしまったことを変更する訳にいかない。
この際仕方がない、逃げるのを諦めよう。
この時俺は、謝ってしまうのが一番の得策だと判断した。
結果的に責任は、俺にあるのだから・・・。
「はい、その通りでございます。
わたくしのせいです、ごめんなさい。」
俺はみんなの前で頭を下げた。
「やっぱり、そうなんだぁ~。
でも、なんで後回しなの?」
更にK子は追及してくる。
「まぁそのぉ~、つまりですな。
何と申しましょうか・・・、今期の予算が無くてですな・・・。」
「まるで、政治家の答弁みたい。」
U子が突っ込んでくる。
はいはい、どうぞ非難してください。
この事は当然、クラス中に伝わるだろう。
こりゃ、全校生徒に伝わるのも時間の問題だな・・・。
「そっかぁ~。
予算が無いんじゃ、仕方が無いわよね。」
K子は、意外にあっさりと納得した。
これまでの経緯ややり取りは傍で見ていたし、
K子自身、うすうすは感じ取っていただろうから・・・。
「来期の予算で、プール建設を確約してきたから。
来年の春以降に、プール建設工事が始まる予定なんだけどね・・・。」
「それじゃ私たち、プールに入れないで卒業じゃない?」
K子は俺の顔を覗きこんでくる。
「う~ん・・・。
まぁ、そうなるかなぁ・・・。」
俺は頭を掻きながら苦笑いをした。