寝ぼけ眼のルイを引きずって大通りから2本外れた宿に着いた頃にはあたりはすっかり暗くなっていた。
ララは神殿で泊めて貰うと別行動だ。明日あち会う約束で夜の闇に消えていくララが心配になって送ろうと追いかけたがすぐに見失ってしまった。
・・・・大丈夫だろう・・・手も口も立つ、凶暴じゃなくってええと・・・しっかりした女性だから。うん。
いけない!早く換金してこなければ!
幸い熊の肉や手はここの宿の親父さんが買ってくれた。
幾分足元を見られたが毛皮や肝も早く売らなくてはいけないので宿代を負けてもらうことで折り合いがついた。
交渉ごとには役に立たない(むしろ邪魔)ルイをそのまま宿屋に預け、道具屋と薬屋にサールだけで向かった。
思ったより毛皮も肝も高く売れたのでホクホク顔で宿に戻ったサールに待っていたのは過酷な現実だった。
テーブルいっぱいに並べられたほとんど空になった皿とコップ、口と手をべたべたにしたルイ。・・・・宿の親父さんの笑顔が怖い・・・
「親父さん、わたくしにもお腹が膨れる物を。それとエールをもらえますか?」
今日くらいはいいでしょうとため息をついたサールは、料理にはほとんど手を付けないままだった。空のジョッキが何個も並べられていく。
満腹になってすっかりご機嫌で回りの冒険者との会話に夢中になっていたルイはサールの三白眼に気がつくのが遅れてしまった。
やばい!やば~~い!!
あまり深く物事を考えないルイだが、流石に繰り返し学習したことは覚えた。このままでは・・!
早く部屋に戻ろうと席を立ったルイの服の裾をしっかり握ったサールの目は据わっていた。
宿の夜は長い。
ルイにはサールの声が朧にしか聞こえていない。・・・・酔っ払いなんて嫌いだ!
いつまでもえんえん続く説教は心底うんざり。これで翌朝になったら忘れてるのが余計悔しい。
ようやくつぶれたサールを担いで二階の部屋に戻ったルイは、隣のベットにサールを放り投げ出した。どこかぶつけたのかゴン!と大きな音がしたがサールが目を覚ます気配は無かった。