といってもそんな大昔のことではなく。
おいらがまだ「若い」といってもムリのない年だった頃。
とある画家の絵に出合いました。
画家の名前はエミリー・カー。
出合ったのはバンクーバー美術館。
カナダを代表する画家なのですが、おいらはその時まで名前も画風も全く知りませんでした。
たまたま友人との待ち合わせまで時間がたっぷりあり。
美術館はそもそも好きな場所で。
「まあ、ちょいと見ていくか」くらいのノリで寄った美術館。
エミリー・カーに興味なんて全くなくて、逆に1フロア丸々彼女の作品と聞いて引いたくらい。
階下で近代絵画展やっていてそちらに人が集中していました。
おかげで彼女のフロアには人はほとんどいなくて貸切状態。
木。
木。
ひたすら木。
とにかく木。
木ばっかり。
決してきれいな絵ではありません。
おいら風景画といえば「コローv」という一般大衆が好きなわかりやすくてきれいな絵が好きな人です。
ところがエミリー・カーの絵は、濁った緑だか茶色だかピンクだか判別がつかないような色合い。
ぐねぐねどっしり。
木の幹だけ、という絵も数点。
要するにちっともきれいじゃなかった。
中央の椅子に座って眺めていたんですが、頭の中が真っ白になって自然と涙がこぼれました。
うっそーー!おいら感動してる?
・・・感動してました。
負けたw
激しく心揺さぶられたわけでもなく、美しい、とか、素敵だ!とか思ったわけでもなく、ただ
「これは木だ」
と思った。
絵じゃなくてね。
ショップによって画集を手にしてみたけど、印刷された絵からは何も感じられなくてどうしても「欲しい」と思えませんでした。もともと好きなタイプの絵じゃないしw お国のカナダでも長いこと認められなかった人らしくて、絵を諦めかけたこともあるとか。うん。そちらの方が寧ろ肯ける。
でも絵本体からは確かに木の気配が感じられるんですよ(スーパーリアリズムではないですよ)。
絵を見て涙がこぼれたのはこれが初めて。
画集も持ってないけどこの時見た絵は覚えています。
好きかと聞かれれば躊躇する。
でも、もう一度カナダまで見に行きたいと思えるほどに魅力がある。
絵なんてたかが布っきれに絵の具塗りたくっただけのモノなのに、なんでこんな風に気持ちに引っかかってくるんだか。
好きでもない絵に感動したり。
描くというただそれだけの行為が苦しかったり。
そのくせやめようと思ってもやめられなかったり。
たぶんみんなしんどくて辛いから描くんだろうなぁ。
苦しんでいるから表現したくなるのかもしれないなぁ。
そんな、十円さん若かりし日の思い出話でありました。
この間から「いい絵ってなんだろう?」って考えていて思い出した昔話w
ちなみに高島野十郎の闇の絵とろうそくの絵が泣かされた2度目。絵見て泣いたのはこの2回だけ。
こちらは画集買ったけど友人も家族も「ふー・・・ん・・・」としか言ってくれませんでした。この人の絵で一番好きなのは「雨」だけどこれでは泣かなかったなぁ(゜_゜)
結局、画家の気持ちに触れたと感じたときに感動するってことなのかもしれないですね。