それは昨夜の事。
普段、黒丸は寝る頃になると二階にやって来る。
私の布団の足元に、丸くなって寝ているはず……なのに……。
今夜は来ない。
おかしい。
夜のごはんはちゃんとあげた。
茶々はここにいる。
私は一階のリビングを覗きに降りた。
「くろ?」
リビングの暗がりに、黒丸はいた。
「にゃあ」
と返事はするものの、こちらを見ようともせず、ずっと一点を凝視している。
「どうしたの?」
「にゃあ」
猫や犬は人間には見えない“この世のものではない”モノが見えるという。
「そこに誰かいるの?」
「にゃあ」
鳴きかたも普段とは違う。訴えかけるような声。
背筋に冷たいものが走った。
「……誰?」
私は、恐る恐る黒丸の視線の先を追った。
リビングの天井に近い壁。何もないはずのそこに………
黒い物体が。
「いやあぁぁぁぁ!!!」
私はそいつにたんまりと“ゴキジェット”をおみまいしてやった。
ありがとう、黒丸。