「もう!!
私、頭きちゃった!」
2限目後の休み時間、教室後方のドアからK子が入ってきた。
かなり憤慨しているようだ。
ズカズカと、真っ直ぐ俺に近寄って来る。
あれ?俺、何かしたっけ・・・?
「ねぇ、聞いてよっ!」
うわっ!
ちょっと待て、いきなり何だ?
「な・・・なにを・・・?」
「3組のN子ったら酷いのよ!」
真っ赤に紅潮した顔に、泣きそうな瞳だ。
こりゃマズイ。
「ま・・・待て、まず落ち着けって・・・。
ほれ、深呼吸して・・・。」
K子は思いっきり深呼吸をする。
「ちっとは落ち着いたか?」
「うん。」
「それじゃ聞くから、落ち着いて話してみ?」
「あのね・・・。」
K子は話し始めた。
要約すると、K子は休み時間中、
友達のN子に会いに、3組まで出向いて行ったらしい。
おしゃべりをしていると、だんだんN子の自慢話が始まり、
それがエスカレートしてK子のカンにさわったのだそうだ・・・。
俺は思わず、
ご近所の主婦同士がいがみ合ってる風景を連想してしまった。
「それってさぁ~。
ご近所の主婦同士が子供を自慢しあってるのと、
ちっとも変わらなくないか?」
「あっ!
そうかぁ・・・。」
途端にK子の顔から紅潮が引いた・・・。
「そんな些細な事でイチイチ隣ともめてたら、
結婚してご近所づきあいなんて出来ないだろ?」
一瞬、K子の顔が輝いたのを俺は見逃さなかった。
今なにか、とってもマズイ事を俺は言ってしまった気がする・・・。
これは、墓穴を掘ってしまったかも知れない・・・。
単に例え話として話したつもりだったのだが・・・。
どうも、あらぬ方向へ展開してしまったようだ。
「そうよねぇ~。
ご近所付き合いなんか、出来ないわよね~。」
ニコニコしながらK子は納得した。
え~い、この際しょうがない。
言ってしまったことは後で修正しよう。
ともかく俺の妻になるかもしれない女が、短気では困るのだ。
「まず自分にプライドとポリシー、誇りと信念を持ってごらん?
そうすれば自慢されても憤慨することはなくなる筈だよ?
そして冷静に判断すること。
感情的になると、ロクなことが起きないからね?」
「わかった。
私、努力してみるね。」
意外とすんなり、K子は受け入れた。