保健室の窓からそよいでくる風は、とっても心地よい。
しかも、抜けるような青空が気分を晴れやかにしてくれる。
今までの空虚感も皆、吹き飛ばしてくれるようだ。
「なるほど居心地の良い場所だ・・・。
君がココを気に入っている訳がわかるよ。」
おそらくココは、S美にとって本当の自分でいられる、
唯一くつろげる場所なのではないだろうか?
そう言えば、S美には姉がいた。
たしか、二人姉妹だった筈だ・・・。
「ところで、お姉さんは元気?」
たしかS美と年子だから、一級上の先輩になる筈・・・。
「ええ、とっても元気よ。
受験間近だから、必死で頑張ってるわ。」
「そうか・・・。
そう言えば来年、俺たちも受験なんだなぁ~。
君は看護婦になるのが夢だったっけ?」
「そんな事、よく覚えているわね?」
「覚えてるさ、心配してたからね。」
「・・・・・・。」
S美が保健室のキッチンから出てきた。
「はい、紅茶が入ったわよ?
お砂糖いくつ入れる?」
「じゃあ、二つ頼むよ。」
驚いたことに、ティーセットで出てきた。
しかも、レモンのスライスまで一緒に・・・。
「凄いな、ココは・・・。
レモンまで付いてくるのか?
こりゃ本格的だ。」
「そうでしょ~?
だから、いつ来ても良いのよ?
あなたなら、いつでもおもてなししてあげるわ。
わ・た・し・も、居るしね・・・。」
本当の自分でいられる、唯一くつろげる場所・・・。
そんな大事な場所に俺を入れて、大丈夫なのか?
自分の居場所が、他人に侵害されるんだぞ?
S美は気にしないのか?
それよりも、ちょっと待て・・・。
『わ・た・し・も』・・・、だって・・・?
じゃ、今までの俺に対するツンツンした態度は何だった?
分からん・・・。
なんとなくわかりそうで、やっぱり分からん・・・。