S美はハンカチで涙をふき取ると、うるんだ瞳で聞いてきた。
「ねぇ?
教えて貰ってもいいかしら?
あの女・・・。
いいえ・・・、彼女のどこに引かれたの?」
「そうだなぁ・・・。
簡単に言ってしまえば・・・。
コイツになら、俺の背中を任せられる・・・と思った。」
S美はハッとした表情をした。
「そうなんだ・・・。
凄いわね・・・、彼女・・・。
そこまで、あなたに言わせるなんて・・・。
嫉妬しちゃうわ・・・。」
そう言われれば、そうだ・・・。
背中を任せられる程、信頼した女など今までいなかった。
このS美ですら、信頼の域にまでは無い。
「で・・・、告白したの?」
「いいや・・・、してない。」
毛頭、告白などするつもりは無い。
「どうして?」
「言ったら、あいつに負けた気がするからなぁ・・・。」
もし『好きだ。』『愛してる。』などの類の言葉を言ってしまったなら、
俺はK子に一生頭が上がらないだろう。
つまり、俺の生命与奪権はK子が握ってしまう。
何としても、それだけは避けたい。
「なに?それ?
相変わらず、変なところで意地を張るのね?」
「悪かったなぁ。
まだ、ガキだからな・・・。
笑ってくれてもいいぞ?」
とりあえず、これは男としてのプライドでもある。
たとえ笑われようと、通さなくてはならない。
まぁ、本当の理由は別にあるのだが・・・。
「笑わないわよ。
・・・らしいわね。」
と言いつつ、やっぱりS美はクスクス笑った。
でもいいさ・・・。
やはりS美に・・・いや、女に涙は似合わない。
「そっか・・・。
まだ・・・、なんだ・・・。」
ポツリとS美はつぶやいた。