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いとまのこさんの公開日記

2008年
01月21日
02:08


スローペースな作者ではありますが
退屈な人はどうぞお付き合いください。

これが読みにくい!とかたくさんご指導いただけるとありがたいです。

なお今回はご指摘を受けて
とりあえず導入部のインパクトある絵を第0話として
1章の一大イベントを最初に持ってきてみましたよ!












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       G o o d

       O l d

       S t o r y

 

 

 
  #000    執行

 

 
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「我々は誓おう。
 汝の死をもって命の平等を示し
 共に人間として生きていくことを」

男の声は半球の天井から出口を求めるように
建物の中を駆け巡っていた。

「スウェリアが4つの王ケンブレア。
 ここにマレ・エイバンの死を証明する」

それ以外の言葉は聞こえない。静けさの中には人の音が聞こえた。
咳き込む音、咽ぶ音、啜る音、しゃくり上げる音。
多くの人が悲しみを受け入れようと、心を隠せなかった。
彼らは半球の丁度真ん中にあるソレを見つめながら
何の力にもなれない、叶わぬ何かを祈っていた。

「愚かだ…」

スウェリア王の傍らにいた鎧の騎士はそう呟いて
ソレに一人で近づいていった。

外からはもう見えないが、逆三角のソレの中には男がいた。
マレ・エイバン――その人物である。

「さようなら。エイバン先生」

騎士はそう声を掛けて、ソレの足元にある大剣の柄を握る。

「僕は君でよかったよ。アンジェリカ」

ソレは微かに笑ってそう言った。
その笑い声を隠すように剣先を引きずりながら
儀式のような見慣れない動きをした後、体の正面に大剣を構えた。

「呪わないでくださいね」

 「あぁ。ほかにやることができたしね」

「…んふふ。私の覚悟は――」



――――――――ガッ!!



「――無駄だったのかしら?」



――――――――ドシュッ!!


「…。」

騎士が大剣を掲げ、振り落とし、そして突き刺した後
ソレから返事が聞こえることはなかった。

騎士は深呼吸をすると大剣を少し下げ
滴る色がソレから伝って来るのを待った。

「…。」

鍔から滴る色を見て、大剣を一気に引き抜いた。
そしてまた、儀式のような動きをして大剣を元に戻し
騎士はスウェリア王の傍らに戻っていった。

それと同時に、今度は神父が出ていった。
二人は会釈を交わしながらすれ違う。
そのすれ違いざまに神父が言った。

「この音が悲しみに聞こえるなら――」

騎士は振り向いて神父を見た。

「――間違っているのは世間でしょうな」

騎士は「抑えろ」と片手をあげて神父を見送り
スウェリア王の隣にある小さな椅子にドスンと座った。

「不条理」

兜を取った騎士アンジェリカは隣の王に愚痴をこぼす。
スウェリア王ケンブレアは膝の上に重ねていた両手を外し
少し背にもたれて腕を組んで見せた。

「それ以外に国が滅びる理由があったかね」

二人は首を傾げ、横目を合わせた。
アンジェリカは眉をあげておどけてみせたが
ケンブレアは視線を逸らして前を向いた。

「白騎士ともあろう人が…」

ケンブレアとは反対側からした声の主に向かって
アンジェリカは首をグルンと回してガンを飛ばす。

「人間ですから」

右も左も敵になった状況で仕方なく前を向いた騎士。
騎士の後ろにいたスウェリアの右大臣はそれに安堵して
顔を両手で隠し、一つため息を着いた。

「ヒッ」

両手を離した。その前にいた騎士は逆様の顔でこちらを見ていた。

「ダイアナ。まだ終わっていませんよ」

ため息をつくには早すぎる。自分だけが問題児ではないぞ、と
アンジェリカらしい警告を周囲に発信していた。

マレ・エイバンの葬式はまだ終わっていない。
それは"怪人法"と呼ばれた協定制度の一つ

『齢三○○を超えた人間には死を与える』

という項目の執行であり、その文字の指すところは
魔法使い狩りに他ならなかったのである。

もちろん魔法使いに縁ある者たちはこれを快く思わず
特にマレ・エイバンたる人物の葬式となる今回の執行には
何万という人が彼の下に集まるという事態となり
国を挙げての厳重警戒の下で行われていた。

執行地エアリア国は、スウェリア国から独立し
マレ・エイバンの協力の下で繁栄してきた。
彼はいわば"国の父"のような魔法使いであった。

"竜"の名を持つ組織が執行を阻止すべく
何度か彼を国外へ追いやったこともあった。しかし今回は
その当人、マレ・エイバンからの執行の申し出であり
当人にその意思がなければ"竜"は動けない。と踏んでいるが
執行に対する不安は関係者の誰もが拭いきれない状況であった。

「何をするの。エイバン先生」

最後の言葉が引っ掛かるアンジェリカ。
次第にブツブツと独り言を漏らし始めた。

「――ったのに…。死ななくても、よかったのに」

その独り言が不気味でダイアナは不安そうな顔をしている。
その隣、ケンブレアの後ろにいた左大臣マルクスが呟いた。

「彼女の言うとおり。何度だって逃げれたはずだ。
 でも逆に言えば、死ぬ必要があったのかもしれない」

ダイアナの顔は余計に不安の色を帯びた。

「執行自体が…」

そう言いかけたダイアナの脳裏に過ったのは
エイバンが味方であり敵であるという
この奇妙な事態を納めるには丁度良いフレーズだった。

「先生には甘えすぎたのかも」

エアリア国、スウェリア国を含む大陸の国々は災害により
国際連盟からの経済的な援助を必要とした。その引き換えとして
"怪人法"を含む協定を結ばなければいけなかった。

もはや魔法使いに頼っていては街も人も廃れてしまう。
大きな力がなくとも、自分たちでできることを増やしていこう。

大陸から海を越えた場所―"外大陸"では、魔法使いの存在は
もはや民を守る職業としても機能していない。
その常人とはかけ離れた能力は犯罪者と同等の扱いであった。

"外大陸"の国際連盟からすれば、犯罪者を囲うような国として
問題視されていた未知の大陸だったのだ。

マレ・エイバンはその考えに対しては肯定的だった。
しかし、"外大陸"から命を狙われるたびにソレを回避した理由は
大陸の国々に希望を見出せるほどの未来を約束する国になりえるかと
執行人を通して"外大陸"を見極めていたからだ。

ダイアナは信じていた。
エイバン先生は犠牲になりつつも"国を思う者"であり
だからこそ、何度でも生きて帰ってきてくれる。
だからきっと今回も大丈夫。そんなふうに甘えていた。

「まぁ、それ考えるのは今でなくてもいい」

マルクスがそう言うと葬式も次第に景色を変え
歌の準備が始まった。ザワザワと人の声が聞こえてきた。

「しっぽを探すんだ。猫は茂みに隠れてる」

アンジェリカは目を丸くした。今の声はエイバンの声だ。
しかし周りに聞いてもそれを確認した人はいなかった。
あぁ、ついに疲れが出てきた。空耳か。と思っていた矢先

「やっぱり。若い君でよかった」

皆が歌い始めた頃、アンジェリカだけが立ち竦んでいた。
何の事だか分からない。話しかける声の主は誰だ。
ただ一つだけわかっていることがある。

彼が死んで、それでも生きることが可能であるとすれば
それは彼が神か悪魔になったということだろう。

「お疲れさま」

執行は無事に終わったように見えた。




アンジェリカに掛けられたの呪いを除いて―――――――




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ご意見、ご感想お待ちしております(*´ω`*)





成功の80パーセントはその場に現れることである。

  Eighty percent of success is showing up.

                Woody Allen

残りの12%くらいが実力で5%くらいが体調、3%が運だね!