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モンスターAMさんの公開日記

2009年
11月21日
17:45
 09年11月21日鑑賞。
09年327本目。

 今回は、下関市菊川町ふれあいセンター
アブニールという、田舎にありがちな、無駄に
でかい公共の箱物でおこわなれた、田中絹代
生誕100周年(今月26日がお誕生日だそうだ)
事業の一環として、下関市が主催した無料
上映会に行ってきた。

 あいにく天気はそんなによくなかったのだが、
ついてみると広い駐車場が埋まっていた。
定員700余名で400人くらいいたかな。
結構な入りだった。

 私は松田優作さんの小.中.高の後輩
でもあるし、うちと田中家とは、前々から
お墓がご近所で、移転してからも同じ区画の
ご近所さんなので、下関の生んだ映画人とは
何かとご縁があったのだが、田中絹代さんの
映画をみたのは今年になってから2本だけ。
しかもスクリーンとなればこれが初めて
だったので、大変期待していた。

 市の職員さんが滑り気味の淀川長治の
物まねで解説をしていたのを聞くと、
昭和6年の作品でその年のキネマ旬報の
一位になった、日本初の長編トーキー映画と
いうことで、しかもドリフターズばりのコメディ
だという。これは期待せずにはいられない。
初めてのトーキーと言うことでとにかくあらん
限りの音をぶち込んだやかましい映画と
いうことだったが、実際見てみるとドリフ的な
ギャグはどこにもなく、どっちかというと、
チャップリンとかに近いものを感じた。

 とはいってもやはり笑いのセンスが昔すぎた
ので会場から(年配の方が多かったけど、
彼らだって当時は生まれたか生まれていないか
の時代の作品だから)笑いが漏れると言うことは
なかった。そうはいってもそれがつまらないと
言うことではなくて、なんというか資料的価値が
高いというか、当時の世相をおもしろおかしく
描いた作品としてみれば、全然問題なかった。

 そして田中絹代さん22歳の時の作品と
言うことだったが、この若き女房役
(二人の子持ち!しかも名前が絹代という役
になっていた)を実にかわいらしく演じて
いらっしゃる。この監督さんは、田中絹代版
「伊豆の踊子」を撮られた方だそうで、
たぶん絹代さんの魅力を存分に引き出す術
を心得ていたんだろう。こういうコメディでも
きらっと光る確かな演技力は今の女優さん
にはないものを感じた。この若さでこういう
演技というのはなかなかできるものじゃない。

 世相を考えるとちょうど一次大戦と二次
大戦の狭間にあって、日本がつかの間の
平和を享受していた頃と言うことで、横文字も
バンバンでてくるし、女性がたばこを吸うシーン
も当たり前のように出て来る。この後の事を
考えると、この時代はいろんな意味で戦前の
最も幸せな時期だったんだなあと言うことが
よくわかる。まだ娯楽が映画しかなかった
時代に、これは貴重な人々の心の潤滑油
として、大勢の人々を楽しませたに違いない。

 そう思ってみるといろいろ感慨深い
ものがあった。

 なお、主題歌の作詞はサトウハチロー
さんが担当されているが、残念ながら音が
悪すぎて聞き取れなかった。何という歌なのか、
歌だけ別に聴いてみたい気がした。