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SHOWRIさんの公開日記

2011年
09月19日
23:59
 「ヨシアキー、これだれ?」
 約束なのでしぶしぶ貼ったポスターを、下からタマがまん丸な目で見つめていた。
 「あ・・・アイドル。」
 あまり触れてほしくなくて、おれは言葉を濁す。
 「アイドルって?」
 タマは無邪気に質問してくるが、その普段とかわらない様子がまた気まずい。
 「え・・・と、かわいい子のことだよ。」
 簡単に説明する。
 タマは、ふーん、と一度ポスターから目をそらし考える。
 自分なりに意味をかみくだいているのだろう。
 すぐに顔を上げたタマが、おれを見た。
 「じゃ、タマもアイドル?」
 期待感いっぱいに訊かれ、否定できない。
 小さな頭に手をのせ、つやつやした黒髪をなでてやる。
 「・・・かもね。かわいいもんね。」
 タマは満足そうに微笑んだ。
 それから、あの後ろめたいポスターの方を向くと、
 「じゃ、タマもあれする。」
 と言った。
 瞬間、タマの姿は残像のように不確かになり、手の感触も消える。
 それもほんの刹那で、すぐにタマをなでていた手は何かに当たって押し返された。
 おれの目の前に、もうあの小さな女の子はいない。
 かわりに立っていたのは、17・8歳くらいの女の子。
 つり上がっているのにくりっと丸い目といい、ふだんから笑みをふくんで見える口元といい、やや丸みをおびた輪郭といい、タマが大きくなった姿に違いなかった。
 それが、ポスターとまるっきり同じ水着で目の前に立っている。
 胸は大きく、腰はくびれ、白い肌は真珠のように奥深い艶をたたえまぶしい。
 中学生には目の毒な光景だった。
 おれは、目をそらした。
 だって、相手はタマなんだ。
 「タマ、・・・化けたの?」
 「ちがーうもーん。
 オトナに、へーんしーん、だもん。」
 タマは女の子向けの変身美少女アニメが大好きで、着替えでもお化粧でも、見た目が変われば彼女にとっては“変身”だった。
 「そう、でも とにかくやめて?」
 なんとか優しい言葉でなだめてみる。
 「なんで?こーゆーのスキなんでしょっ?」
 無邪気に笑いながら飛びついてきた。
 「うわ」
 勢いが強くてよろけた拍子に、タマの体に手がかかる。
 「ぉ・・・っとぉ。」
 片手は背中に回ったが、もう片方の手はお尻を押さえてしまった。
 両手に、素肌の感触。
 どうやらポスターでは見えない水着の後ろ側を想像した結果、ヒモパンの紐部分そのままだと思ったらしく、Tバック状態になっていた。
 「あぁっ、うあ、ごめん!」
 すぐに手を離すが、最早おれは大パニックで何も考えられない。
 ほとんど裸みたいな女の子に抱きつかれて、中学生男子が冷静でいられるだろうか?
 タマはおれの頭の中などわかっていない顔で、
 「なにが?」
 と、首をかしげる。
 「あっ・・・え、とっにかくっ、離れぇっ。・・・元に戻れよ!」
 どう言ったらいいかわからなくて、自分自身にも苛立って、口調が荒くなった。
 タマは眉をひそめる。
 「なーんでー?」
 「・・・ぼくはっ」
 おれは、言葉につまった。
 なんでいけないんだろう。
 どういえばいいんだろう。
 もちろん、妹みたいに思ってるタマにこんなことされても、困ってしまうだけだから。
 だけどこの時のおれは本当に焦っていて、すぐにそれが出てこなかった。
 絶句したままオロオロするだけのおれに、タマはさらに迫ってくる。
 「えっちなこと、しよ。」
 「はァ?!」
 おれは大きな声をあげた。
 バカ言ってんじゃない、という意味合いをこめたつもりだったが、その声は裏返ってしまっていた。
 「だってヨシアキ、えっちなおんなのこがスキなんでしょ?」
 ポスターのことを言っているらしかった。
 「違うっ、違うよタマ、ぼくはそんなの好きじゃないっ。」
 真実とはいいがたい言い訳をして、おれは否定した。
 「ヨシアキは、タマのことスキじゃないの?」
 さらに答えに困る事を口にしながら、不満そうに見つめてくる。
 「す、スキだよ?でもそういう意味じゃ」
 「タマもヨシアキダイスキ!ヨシアキがうれしいことしてあげるー!」
 ぎゅうぎゅう抱きついてくるタマの胸の柔らかさは、おれをダメにしそうだった。
 「・・・。ぼく・・・おれはっ!
 そういうのはあの子みたいなコとしたいんだ!」
 すんでの所で踏みとどまり、おれはポスターを指差した。
 しょーちゃんみたいに男らしくなったつもりで、自分を“おれ”といってみる。
 そうすれば説得できる気がした。
 何を言っているのかわからない。
 タマはそんな表情をして一瞬呆けていた。
 すぐに泣きそうな顔になると、元の小さな女の子に戻り(服も当然ふだん着に戻った)、ポスターに駆け寄った。
 次の瞬間。
 「ヨシアキなんか、ばかー!」
 びりびりびりびりっ。
 ポスターは音を立てて引き裂かれた。
 これが、おれがタマの激しい嫉妬を初めて目にした瞬間となった。
(続)