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SHOWRIさんの公開日記

2011年
12月13日
23:52
 「・・・タマよ、どこまでが神様で、
 どこからが食べ物の話だったのだ?」
 呆れた顔をしているであろう私に、タマは笑顔を見せた。
 「わかんない。」
 可愛らしくはあったが、それは私の混乱を取り除く役には立たなかった。
 「私はもっとわからぬ・・・」
 私は、己が思う程賢くないのかも知れぬ。
 情けなさに、眉間を押さえて耐えた。
 タマが気づかう声をかけてくる。
 「どしたの、アタマいたいの?」
 「あ、いや」
 そんな気がする事はするのだが、実際に痛みはない。
 タマにはそれが解らぬらしい。
 「タマ、いいこしてあげよーか?」
 「良い子・・・?」
 「しゃがんでー。」
 意味も解らぬまま、私はとりあえず従ってみる。
 何をするのか、少し気になった。
 するとタマは、私の頭を撫でてきた。
 成程。
 良い子、は撫でてやるものだ。
 「これで頭痛が治るのか?」
 一種の呪い(まじない)であろうか。
 「ズツー?」
 タマが訊き返した。
 「頭が痛いことを、そう言うのだ。」
 「ふーん。」
 「で、治るのか?」
 「ヨシアキは、よくなったよーってゆうよ。」
 「ヨシアキ?」
 急に出てきた男の名。
 「それは、人間か?」
 他の狐ということも、考えられなくはない。
 そしてそれは、タマの伴侶であるかも知れぬ。
 子供に見えて、妖怪の年は判らないものだ。
 私は興味を引かれた。
 「ヨシアキはねー、ニンゲーン。」
 それを聞いて安心した。
 そうであれば、種族の壁は障害となってくれる。
 と考えて、気付いた。
 知らず、淡い焦りを抱いていた事に。
 タマを我が物としたい、そう思い始めていた事に。
 同じ狐だからに過ぎぬであろうが、私を頼ってきた事が好ましく思えたか。
 それとも、容姿の美しさか。
 はたまた、目映いばかりの笑顔を惜しまぬことか。
 それに、私を心配もしてくれた。
 どれが理由なのか。
 何が私を捕らえた?
 不可解な気持ちを自問する。
 否。
 どれではない。
 全てが好ましいのだ。
 考え込むあまり黙っていた私を、タマが覗き込む。
 「どしたのー?おハナシしよー?」
 退屈させてしまったようだ。
 「あぁ、ああ、そうだな。
 では質問させてもらおう。
 タマ、そなたはヨシアキとやらに使役・・・
 使われておるのか?」
 タマにも解るよう、使役という難しい言葉を易しく言い換える。
 「ツカう?」
 それでも訊き返されてしまった。
 タマとの会話は骨が折れる。
 しかし、伝わる事に喜びを見出せる。
 それはささやかだが、それでも、当たり前の事が有難いのだ、と小さなタマに教えられている気がした。
 私は、伝わらなかった言葉を、もう一度噛み砕いてタマに差し出す。
 「命令されて働かされる、というような事はないか?」
 「えっとねー、ゴハンのあとおサラもってきてー、って、ゆうよ。」
 「お皿?」
 今度は私が訊き返す。
 「うん、おサラ。あとはねー、いいこにしてなってゆうよ。
 いいこにしてるとねぇ、おイナリさんつくってくれるー。」
 どうやら式などとして使役はされていないらしい。
 だが新たな疑問が生まれた。
 食事の後に皿を持っていく、というのはもしかしたら片付けの手伝いなのではないだろうか。
 そして、良い子にしていると好物を作ってくれる。
 それは・・・。
 「タマよ、母親・・・おかあさんではないのか、それは。」
 「タマ、おかあさんいなーい。
 ヨシアキのことでしょー?」
 話がずれている、と言いたげにタマが私を見る。
 ではタマは、母親のような男に、子供として育てられているのだろうか。
 母のような男。
 おそらくは、“おかま”という種類の人間であろう。
 最近急に増えだした。
 だが奴らとて、変わってはいるが決して人外ではない。
 同じ人間だ、心根の優しい者もいるだろう。
 女のように生きてはいても、子供は望めぬ体。
 タマを娘の代わりとしているのやも知れぬ。
 そうに違いない。
 合点がいった。
 「・・・そうか、タマよ、幸せか?」
 「うん、タマ、ヨシアキ ダイスキ。」
 タマは笑ったが、ならばなにゆえ此処にいるのか。
 「ではタマ、そのヨシアキはどうしたのだ。
 なにゆえ此処に来た?」
 「ヨシアキはね、タマのことおいてっちゃったの。
 ショウリんとこにおとまりなの。」
 「・・・ショウリ、とは男か?」
 「うん、カオこわいし、ヨシアキとろうとするからキライ!」
 タマを置いて男と逢引とは、やはりそのヨシアキとやらは“おかま”で間違いないのだ。
 「それは、淋しかったな。」
 「うん、あしたかえるよーってゆってたけど、おきたらひとりで、さみしかったの。」
 「そうか、そうか。」
 私は、一人で留守番をする健気なタマを思うと胸が絞め付けられた。
(続)